紹介:詩人秋野さち子(従叔母)の詩

金子みすゞと同世代の西城八十門下の詩人の詩を紹介

20210218 詩集(夕茜の空に)より

  黙して語る詩を

夏負けで咲かなかった朝顔
冬近くなって
命の勤めそのままに 褒められることもなく
ひたすら咲きつづけたという

わたしのいのちは勤めをおこたり
砂山の陰に横たわっている
いくたびも脳を 胸を 骨を輪切りにして
CTスキャン
わたしのいのちのかけらを見つけたか

今見ている地平線にたどりついたら
次の地平が見えてくるだろう
地球は丸いのだから盡きることなく
いのちのかけらは
ひたすら歩いてきたが
あの砂山を超えたら海が見えるか

海のむこうでは
多くの人がとらわれたり
難民のいたましい生き死にが見えたり
砂に坐した胸をえぐる

それでも朝顔
命の勤めを果たしたあなたのように
私も歩いてゆかねばならない
そうして 海が見えたら
胸の蒼は黙して開き
黙して語る詩を
透明な虹の香りで空に掲げよう。