秋野さち子全詩集Ⅳ(1972-1983)より
「狂い」
額田の王の話を聞いた帰り道
「そうしてはいけないかしら」
夫子のある若い女(ひと)は
ボールを投げて来た
夫子あるなしより
狂いの軽重ではないのか
近景は走り去り
遠景はゆっくりその姿を見せている
愛と言わずに恋と言わずに
狂いと言う わたしの遠景
「泣くのも笑うのもあなたなのだからー」
ボールを投げ返した
燃えるものを揚げなければ
行く手の冥い道へ
日々わたしも静かに発狂していく
「狂い」
額田の王の話を聞いた帰り道
「そうしてはいけないかしら」
夫子のある若い女(ひと)は
ボールを投げて来た
夫子あるなしより
狂いの軽重ではないのか
近景は走り去り
遠景はゆっくりその姿を見せている
愛と言わずに恋と言わずに
狂いと言う わたしの遠景
「泣くのも笑うのもあなたなのだからー」
ボールを投げ返した
燃えるものを揚げなければ
行く手の冥い道へ
日々わたしも静かに発狂していく