紹介:詩人秋野さち子(従叔母)の詩

金子みすゞと同世代の西城八十門下の詩人の詩を紹介

'21-1-30詩集「夕茜の空に」より

白い館 2

ここにも、赤い三角形を
三つあしらった標識がある。
この標識に囲まれた白い館が
わたしのいのちの城なのか。

まずは、型とりの儀式、
十三階段ではないが
五つ六つの階段を
横たわるシェルターでは
薄衣に似たガウン一枚の裸身に添って
発泡スチロール状の片々が隙間を埋める。

白衣の人達の優しいしぐさで
眼は覆われる。
やがて、すべての気配が遠のいた頃
暖かい霧がしのび寄り
次第に熱をともなってくる

これが棺の中の焼却炉の道筋か、
覆われた瞼の向こうは
暗いようで明るい
飛び立つ前に聞こえるものは
空へのともづな揺れのようだ
どれほどかの経緯があり
鳥にはなれなくとも
昏れない空の
等身大の鋳型に向き合わねばならない。