'21-1-27詩集「夕茜の空に」より
「白い館」ー重粒子線棟
誰に決められたのか、知ろうともしないで
長い長い廊下を通って
地下へ地下へと下り
誰もいないこの白い壁に囲まれた室内に
何故か、不安氣もなく
わたしは坐っている。
応接間のような優しいソファと
椅子が何脚かあり
白い壁に絵がかけられいて
それがルネ・マグリットに似ているからか
似ているように思うからか。
誰かがわたしの背を
車椅子の背を押してきて、いなくなった。
私は透明な気体になったようだが
あの細胞達は目覚めているか。
何を待っているのか、言葉が溶けても
心では問いかけることが出来る
いのちの空洞の中で
透明な気体のみじろぎは自由なようだ。
それでは、あのい長い廊下は
彼岸への渡殿だったのか。
だから、誰もいないこの白い空間に
不安氣もなく
わたしは坐っている。