紹介:詩人秋野さち子(従叔母)の詩

金子みすゞと同世代の西城八十門下の詩人の詩を紹介

'21-2-3日 詩集「夕茜の空に」より

 下弦の月

朝明けの青い空に
くっきり浮いている半かけの月
弦を右にして
少し上向きの横顔は
やがてその弦をかきならし
真昼の海原に
燃える口づけをするのか

深夜の空に昇りはじめる時
その弦には
今日の詩がすでに籠められているのか
未来も過去も
一目で見渡せる宇宙の高みから
諍いの続く地球への呼びかけは何か

朝明けの青い空に
弦を傾けて口ずさんでいる
聞こえないその詩に耳をすませる

人はあなたを
有明の月と呼ぶ